創意工夫で数学を楽しく!

「数学は答えが1つしかないから、つまらない」 良く、こんな事を言う人が居ます。 だけど、 これは数学を知らない人の意見だと思うんですよ。

たとえば 「登山は、ゴール(山の頂上)が  1つしかないから、つまらない」 こんな事を言う人は、いないと思います。 確かに、最終的なゴールは1つでしょう。 でもゴールに至る道のりには色々なものがありますし、 その過程には色々な事があります。 それを「楽しみ」ながら ゴールに到達する達成感を求めるのが登山なのだろう きっとそうだろうと私は思うんですが、 これくらいのことは、 登山をしない人でも普通に思ってる事でしょう。

数学だって、同じなんです。

数学が好きな人、得意な人は 答えに至る色々な方法を楽しんでいます。 だから 1つの方法で解けたとしても 「別の解き方で解けないだろうか」と考えるのです。 それで 色々な解き方で解くことを楽しんでいます。

確かに、 数学には答えは1つしかありません。 だけど、 答えへの過程で色々な創意工夫をすることができて、 それが数学を楽しくするのですよ。

(追記部分に具体例を)
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具体例

さて、 具体例といきましょう。 (HTML に慣れてないので、  数式の表示がしょぼいですが許してください。  そのうちこっそり改訂します。) 易しい問題、足し算から始めましょうか。 こんな問題はいかがですか?

7 + 6 + 3 + 2 = ?

「やさしすぎる」という方は、 それでは暗算でやってみて下さい。 やり方によっては、 ちょっとややこしく感じるかもしれません。

さて、みなさんはどのように解きましたか? 普通に頭から順番に足していって、 「7 と6 を足して13 になって、  これに3 足して16、さらに2 足して18」 って感じでしたか?

でも、 こうやった方も、結構いるんじゃないでしょうか。 「足していく順番を変えてもかまわないから、  2番目と3番目を入れ替えて

 7 + 3 + 6 + 2 = ?

 としてから順番に足していこう」

こうしてやると、 7 + 3 が10 になるので、計算が少し楽になるんですね。 まあ、本当にちょっとした事なんですが、 こうすることで、 特に暗算してやろうって時は、 間違える可能性は小さくなるんです。

足し算ばかりの場合、 順番を変えても良いんですよね。 その時、順番を変えるくらいの事で、 計算は随分と楽になることが、あるんです。 引き算が混じっている場合は、 もっと効果がある場合が多いです。 例えば

13 - 6 + 24 = ?

この場合も

13 + 24 - 6 = ?

と見なす事で、 繰り下がりがなくなって計算がしやすくなります。

そんなに大して簡単になる訳じゃぁ、ないんですが、 言いたいことは、理解して頂けますよね? つまり 単なる計算でも、少しやり方を工夫してやれば、 より簡単に、間違いを少なくすることが できるんですよって事です。 で、 ほんのちょっと簡単になるだけでも、 そういう工夫をたくさんやれば、「塵も積もれば」で、 随分と易しくなる場合も、あるんですね。 何より、そうやって工夫することで、 少しでも簡単になったなら、 それはとても面白いことだって思うんです。

工夫のやり方は色々ある

ここからは、計算が苦手な方は、 解き方を考えて頂かなくてもかまいません。 ただ、「解き方」を鑑賞してもらえればって 思います。

こんな問題を考えてみましょう

1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42 = ?

結構、ややこしい問題ですよね。 分数の足し算、引き算は「通分」 つまり、分母を揃える作業をしてやらないといけなくて それが難しいって人は多いですよね。

まず、 「普通に」解いていきましょう。 通分の説明は、特にはしません。でも 「分母と分子両方に、  同じ数をかけても数は変わらない」 って事さえ、押さえていれば とりあえずはオーケーでしょう。(かな?)

「1/12 」は、分母と分子両方に5をかけて、 「5/60 」とし、 「1/20 」は、分母と分子両方に3をかけて、 「3/60 」とすると足すことができて、

 1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42

= 5/60 + 3/60 + 1/30 + 1/42

= 8/60 + 1/30 + 1/42

と、1つ目の計算ができます。 次に、2つ目の足し算ですが、 その前に1つ目の計算の結果、 「8/60 」ができているので、 これを約分してやる必要があります。 でも、次に足す数字が「1/30」なので、 あまり小さくせずにとりあえず半分にして 「8/60」を「4/30」にしてやる。 すると、

 8/60 + 1/30 + 1/42

= 4/30 + 1/30 + 1/42

= 5/30 + 1/42

と、2つ目の計算ができました。

最後に、 「5/30」は、ここは素直に約分して「1/6」にし、 通分して「7/42」にしてから足すと

 5/30 + 1/42

= 7/42 + 1/42

= 8/42

= 4/21

と計算ができました。

でも、 これも、数学が得意な人なら、きっと 「最初に『1/20 + 1/30』をやれば良い」 って思うでしょう。 この部分の計算が、一番易しそうですからね。 「1/2 + 1/3 」と同じような感じでできますから。 そうすると、

 1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42

= 1/12 + 3/60 + 2/60 + 1/42

= 1/12 + 5/60 + 1/42

= 1/12 + 1/12 + 1/42

= 1/6 + 1/42

= 7/42 + 1/42

= 8/42

= 4/21

少し、易しくなります。

この計算の過程を見た人なら、 「最初に全部を、  分母60で通分して足してやれば良いんじゃない?」 と思った人も居るでしょう。 そうやると、もう少し易しくなるかもしれません。 全部をまとめて通分するって人も、きっといるでしょう。 「通分みたいなややこしいことは、まとめてやりたい」 と考えても、かまわないと思いますし。

このように、 同じ問題でも、色々なやり方があって、 それぞれに好みはあるでしょう。 実はこの問題、最後に解説するような 「もの凄い解き方」もありますし。

つまり、 1つの問題に対して、 いくつもの工夫の仕方があるってのが、 数学なんです。 だから、 数学の解き方には別解がたくさんあって、 たくさんの別解を思いつく人が、 数学が得意な人って言うことができるくらい、なんです。

だから、 色々な計算や問題に対して、 自分なりの解き方の工夫をしてみる、 そして 一度解いた問題についても、 他のやり方がなかったか、考えてみる そういう事ができるんですね。 しかも このことは、実は数学の一番の上達法だと 私は考えています。 それだけでなく 「計算のやり方を色々と工夫してみる」って事は 「数学の本質」にも通じている事なんだって、 私は思うんです。

だから、 よく 「計算問題は、解き方はわかっていて面倒くさいだけ」 とか 「計算は電卓を使って」 とか言わずに どうか、計算問題を、色々な工夫を楽しみながら、 解いてもらいたいな、って思います。

(最近の学校では  電卓を使わせるらしいんですが、  私はそれに、反対なんですよねー。  それは、こういう訳です!)

知識があれば、色んな事ができる!

ここまでは、 「計算する順番を工夫する」くらいで、 色々と解き方を簡単にすることをやってきました。 だけど、 色々な「数学の知識」があれば、 もっと色々な工夫ができるんです。

例えば、こんな問題はどうですか?

729 x 999 = ?

・・・こらこら。電卓を出さない! これを自力で計算するとなると、 とても大変、 と思うかもしれません。 だけど、こうするんです。

 729 x 999 = 729 x (1000 - 1)

= 729000 - 729 = 728271

これは、

A x (B + C) = A x B + A x C

という公式がありましたよね。 「999」をかけるのは大変ですが、 「1000」や「1 」をかけるのは簡単。 となると、ややこしいかけ算が、 簡単な引き算になっちゃうんですねー! (あと、「補数」って考え方を知っていれば  最後の引き算も暗算です。)

これも、 上に書いた「公式」を知っていれば、 こんな計算のやり方もできるって事なんです。 このように、 数学を勉強すると、色々な事ができるようになるんです。

習ったことは、どんどん使おう

こんな事がありました。 家庭教師をしていて、教え子が分数の計算問題で、 分母に7の4乗、 分子に7の3乗があったのに気づかずに、 7の4乗を計算し始めてしまったんですね。 教える側としては、ちょっと焦ります。 「教育」としては、 やりはじめた事をやめさせるのは良くない。 でも、 7の4乗の計算が合ってるかどうか、 それをちゃんと確認してあげないといけない・・・ 大変な作業になっちゃいますねー。

さて、ここで問題。 7の4乗、簡単に計算する方法はありますか?

7の4乗とは、7を4回、かけ算する事でした。 つまり

7 x 7 x 7 x 7 =

初めの「 7 x 7 」までなら、 九九を覚えているのですぐにできます。 49 ですね。 しかし、それに7をかけるのは大変だし、 さらに7をかけるとなると・・・ 想像するだけで、大変です。 でも、 順番にかけていくのではなく、

49 x 49

つまり、49 の2乗と考える事が、できます。 ん? それはわかるけど、 問題が易しくなったようには見えないですか? じゃあ、さらにこう考えるんです。

492 = ( 50 - 1 )2

こうすると、気づく人も出てくるかもしれません。 中学校で、因数分解とか、習いましたよね? ここでは逆向きなんで、「乗法公式」ですけど。 そこで、

( X - 1 )2 = X2 - 2X + 1

ってのがあったのを、覚えておられるでしょうか? これを使うんですね。 この「X」って、 どんな数字を入れてもオーケーな訳ですから、 (わからない人は、  「文字式について」を参照下さい。) 50 の2乗は 2500、 「2X」つまり「2 x X = 2 x 50」 ですから100になる。 引いて、2400、最後に「 1 」を足して

2401・・・!

このやり方なら、暗算で出来ると思いませんか?

さて。 因数分解の公式 (逆向きに使うので「乗法公式」と呼びますが)を 知っていた人は、きっとたくさんいることでしょう。 でも、 この公式を、こんなふうに使うって発想は、 みなさん、持っていましたか?

今まで、色んな事を習ってきたと思うんですが、 それを「使ってみよう」とか 「役立ててみよう」とか 考えたことがありますか?

良く 数学なんて役に立たない」という事が言われます。 だけど、私は 「そもそも数学を役立てようと  思っていないんじゃないか」 って思うんです。

だから、 「計算の工夫」って事について、 色々と習ったことについて、 どんなふうに計算に使えるかなって 考えてみてほしいんです。 新しい事を知ったら 「これを使えばどんな事ができるだろうか?」 って発想で、色々と試してみる。

確かに 特殊な場合しか使えなかったり、役に立つ場面なんて たまぁーにあるくらいですよ。 だけど、その「たまぁーに」が、 とても楽しいですし、嬉しいです。

しかも 普段から、そんなふうに考えて、「練習」していれば いざって時に、例えば 突然「7の4乗を計算する場面」なんかが来たときに 思いつくんです。 (自慢じゃありませんが、  私は上記の家庭教師の場面で、こんなふうに考えて  その場で答えを暗算で出して、  生徒さんの計算間違いを指摘しましたよ。  そして、  こういう発想で普段から「使って」いれば、  誰でもできるようになると思う。)

そして こんなふうに「使えるようになる」って事は、 つまり、習った新しい知識が 「生きた知識になった」って事ですから 数学もどんどん、得意になるんです。 私は、そんなに必死に勉強した訳じゃないんですが、 数学が得意でした。 それは こんなふうに勉強してきたからだって、思います。 だから、まず 「使ってみよう」という発想を持つことを、 薦めますよ。

「スゴイ解き方」を鑑賞する

最後に 「知識があれば、こんなスゴイ事ができるんだ」 って事を、鑑賞しましょう。 前に出した問題

1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42 = ?

は、こんなふうに解くことができるんです!

1/12」は、「1/3 - 1/4 」に 「分解」する事ができるんです。 実際に「1/3 - 1/4 」を計算すると、 「1/12」になるのを確認できるでしょ?
これは、
1/n(n+1) = 1/n - 1/(n + 1)
という 「部分分数に分解する」公式があって それを用いたものなんですね。 そして! 次の「1/20」も同様に「1/4 - 1/5 」 に分解出来るって事が、同じ公式を使えば分かるし、 その次の「1/30」も「1/5 - 1/6 」に、 「1/42」も「1/6 - 1/7 」に分解できる。 すると、この問題は、

 1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42

= 1/3 - 1/4 + 1/4 - 1/5

+ 1/5 - 1/6 + 1/6 - 1/7

よく見て下さい! ちょうど、「 1/4, 1/5, 1/6 」が キレイに消えるようになっているんですね。 そうなると、

 1/12 + 1/20 + 1/30 + 1/42

= 1/3 - 1/7

= 7/21 - 3/21

= 4/21

となる。 どうですか、これだったら「暗算」でできるでしょ?

実は、この問題自体が、 この解き方に合わせて作った物なんです。 だから、 こんなスゴイ事ができることは滅多にないんですけど。 だけど、なんかちょっと、感動しません?  すごくきれいな解き方だって思うんですが。 (ただ、聞いた話によると、  こういう問題が中学入試で良く出るんだそうです。  そーれは問題あるなあ、  って同時に、中学入試の問題を作っている人の、  発想の元ネタが分かった気がします。) でも、 「部分分数」って事を知ったら、 どういう事ができるかって考えてみると、 こういう面白い事も思いつくって事です。

こんなふうに、 単に問題を解くってだけでなく、 その解き方の過程でいろいろな工夫を楽しむ って発想を持つと、 数学が面白くなるって知って下さい。