日本でも「論文捏造疑惑」はあったんですが

韓国の黄教授による論文捏造が 大きく報道されています。 テレビのニュースでも大きく取り上げられてるので ご存知な方が多いでしょう。


ES細胞:ねつ造 審査論文検証なく


正月に帰省した際、私の親でさえ この事件の事を知っていて、 「韓国の科学はけしからんなぁ」 みたいなニュアンスで捉えていたので この件を書こうと思いました。 (親はこれから書く件は  全く知らなかったらしいです。)


実は、日本でも 昨年、大きな「論文捏造疑惑」が2件あったんです。


1つ目は、大阪大学の研究室が、 ある遺伝子のノックアウトマウス (その遺伝子をなくしたマウス)を 作成できていないのに、作成したとして 論文を出した、という問題です。 そんなマウスは無い事が判明したため この研究室は論文を取り下げました。 この事は、新聞でも多少大きく取り上げられたので ご存知の方はおられるかもしれません。


(また、この件では、  「偽造」をした学生が研究費を研究室に  寄付をしていた、という別の倫理問題も  ありました。)


もう1つは、東京大学産業技術総合研究所の 研究室で起こった疑惑です。 この件は、簡単に説明するのが難しいので 詳しく調べてるこちらの記事を紹介。
東大RNAi研究者の論文捏造事件に関して


要するに 日本でも、実験データを捏造して論文を発表し 「華々しい研究成果」を出していたところは あった訳ですね。 ま、スケールは全く違いますけども。


だから、 韓国の方での「捏造事件」だけを こんなに大きく報道して 「韓国はダメだなぁ」みたいな雰囲気を垂れ流すのは どうかと思う。 この事件は他山の石とすべき事で、 しかも日本でも似たようなニュースがあったのだから。


加えて 日本の方では、ちゃんと「真相解明」が 進んでいるか? 関係者が処罰されたり再発防止に取り組んでるか? というと 疑問があったりする訳で。 例えば 後者の件では、所属する産総研では 昨年の9月14日に「予備調査」が開始され 12月2日にその結果が出て、 それを踏まえて改めて、 外部の人間を含めた「調査委員会を設置」という スピードな訳で・・・ これじゃぁ、正式な結果が出る頃には すっかり風化してしまって 処分や再発防止策も形式的なモノに なっちゃわないかなぁ? (東大ではどうなってるかは知らない。  RNA学会はかなり早く動いて  学会のトップページの目立つ所に  声明のリンクを載せています。  RNA学会は、やる事やってますね。)


自分たちの手で、速やかに真相を解明し、 関係者を処罰して、効果的な再発防止策をとらない限り 「日本の科学」の信用も失われてしまいます。 韓国の件は、 全く、他人事でも笑い話でもないのです。

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あと、これらの論文を掲載した ジャーナル(雑誌)の審査の信用性も 問題になると思います。 「ピア・レビュー・システム」の有効性が 問われる事になるのかもしれないですね。 (特に、黄教授の件でのサイエンス誌の姿勢は  批判を受けていますね。) なんでも、アメリカの研究費の機関では、 そこの研究費を受けて研究した結果については ウェブで公開する事を求めている、 という話を聞いた事があります。 そうやって、より広く公開する事によって より「厳しい批判」に晒されるようにしよう という事も、あるのかもしれないですね。